【第2回】改定後の就労証明書とそのメリット

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第1回のコラムでは、就労証明書デジタル化の概要と、改定前の就労証明書作成・提出の流れやそのデメリットについて整理を行いました。第2回のコラムでは、令和6年4月入所分から行われる就労証明書の様式統一化、提出のオンライン化の改定について今年9月の変更点も踏まえて見ていきます。

改定後の就労証明書様式

令和4年12月、政府より、就労証明書の様式を統一化し、企業が従業員の就労証明書を直接自治体にオンライン提出する仕組みを設けるとの通達がありました。既に 統一された就労証明書の標準的な様式がこども家庭庁より公開されています。また、令和6年4月入所分に間に合うよう、自治体が標準的な様式を原則使用するように、こども家庭庁主管で、子ども・子育て支援法施行規則の一部が改正されました。

  • 別添 就労証明書(簡易版)標準的な様式
    こども家庭庁>政策>保育(https://www.cfa.go.jp/policies/hoiku/)

従来は、「簡易版」と「詳細版」、2種類の標準的様式が用意されていました。改定後の就労証明書は、従来の簡易版をベースにして、1種類に集約されています。ここからは具体的な改定内容を見ていきましょう。 改定の1点目は、「簡易版」から削除された項目があることです。以下項目は、人事担当者による証明が困難、または従業員の申請により確認可能と考えられるため、 削除されています。

  • 「民生委員・児童委員証明」
  • 「本人住所」
  • 「通勤手段」
  • 「保育士資格等」
  • 「保護者記載欄」

改定の2点目は、「簡易版」に追加された項目があることです。以下項目は、「詳細版」のみに設けられていた項目や選択肢ですが、改定にあたり追加されました。

  • 「雇用の形態」の選択肢に「役員」
  • 「産後・育休以外の休業の取得」
  • 「保育士等としての勤務実態の有無」の選択肢に「□有(予定)」

改定の3点目は、追加的記載項目が追加されたことです。これは、「詳細版」のみに存在する記載項目で、自治体が必要不可欠と判断した項目に限り、追加的記載項目に記載することを可能としています。 なお、追加的記載項目は様式としてあらかじめ用意されており、自治体が記載項目を自由に追加できるわけではありません。

改定後の就労証明書作成・提出の流れ

提出の流れは、申請者が提出する「従来型」と、企業が提出する「直接提出型」の2パターンになると想定されています。

従来型

「こども政策DX推進チーム(第3回)(令和5年3月29日開催)」(こども家庭庁)(https://www.cfa.go.jp/councils/kodomo_seisaku_DX/、参照 2023-07-20)を加工して作成

① 従業員が人事担当者に就労証明書作成を依頼する

② 人事担当者が就労証明書をExcelファイルで作成する

③ 人事担当者が従業員に就労証明書を交付する

④ 従業員が自治体にぴったりサービスを利用して申請書を入力する

⑤ 従業員がぴったりサービスを利用して申請書データを作成する。その際就労証明書を添付する

⑥ 申請書をオンラインで提出する

直接提出型

① 従業員が人事担当者に就労証明書作成を依頼する

② 人事担当者が就労証明書をExcelファイルで作成する

③ 人事担当者がぴったりサービスを利用して就労証明書データを作成する

④ 就労証明書がぴったりサービスによって、自治体にオンライン提出される

⑤ ぴったりサービスによって、人事担当者に受付番号が発行される

⑥ 人事担当者が従業員に受付番号を連絡する

⑦ 従業員が申請書を入力する。

⑧ 従業員はぴったりサービスを利用して申請書データを作成する。受付番号を申請書作成の際に入力する

⑨ ぴったりサービスによって、申請書が自治体にオンライン提出される。 就労証明書と申請書は受付番号を基に紐づけられる。

なお、令和6年度入所分に係る就労証明書の提出方式については、直接提出型に対応しない旨の通達が、こども家庭庁より出されています(「令和6年度入所分の就労証明書提出について(令和5年9月1日付け事務連絡)」(https://www.cfa.go.jp/policies/hoiku/))。これは、事業者・自治体の双方に事務負担が生じることなどを総合的に勘案した結果の判断のようです。具体的には、「申請書と就労証明書の紐づけに必要な番号の連絡ミス」「企業等の提出先間違い」などが発生しうると予測されています。
また、提出方式については、関係者の負担軽減となるよう継続して検討が進められます。

改定後のメリット

改定後のメリットとしては以下が挙げられます。

① 全国で様式が統一されるため、自治体からの様式取得が不要となる 改定前は従業員から各自治体の様式を送ってもらう手間が発生していましたが、必要なくなりました。

② 人事担当者が就労証明書を作成する時の事務負担が軽減される標準的様式の「簡易版」を基に様式統一されるため、作成項目数や自治体ごとに記載内容を細かく確認する手間が減少します。また、書き間違えなどのミスも減少すると考えられます。加えて、様式統一化に伴い人事システム等との連携も行いやすくなります。

③ 申請者の提出負担が軽減される原則全自治体がぴったりサービスを利用した就労証明書の提出に対応するため、どの自治体に対しても、保育園の入所に関する申請の全てをオンライン上で行うことが可能になります。 これにより、窓口に直接申請書を届ける手間や、書類を纏めて投函する郵送の手間が軽減されます。また、子育て中、外出せず好きな時間に申請を行えるといったメリットもあります。

第2回は改定後の就労証明書の様式や作成、提出の流れについて見てきました。現状の就労証明書と比較すると、提出までにかかる事務負担が軽くなることはイメージいただけたのではないでしょうか。第3回では、より事務負担を軽減するために、企業がどのような就労証明書発行のシステム化を行うべきか考えていきます。

執筆者略歴

杉原 靖菜
株式会社電通国際情報サービス
HCM事業部製品企画開発部

新卒で入社以来、大手企業向け統合HCMソリューション「POSITIVE」の法制度改正対応や新機能開発に従事。「システムづくりと人事業務両方の知見を持って、お客様はじめ製品に関わる全ての人にとって意義のあるシステムを作りたい」という思いで日々業務に取り組んでいる。

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※このコラムは執筆者の個人的見解であり、電通総研の公式見解を示すものではありません。