自転車通勤の交通費は非課税になる? 人事キーワード・ノウハウ 公開日:2026年02月13日(金) 近年、健康志向や環境意識の高まりを背景に、自転車通勤を選ぶ人が増えています。満員電車のストレスから解放され、運動不足の解消にもつながる自転車通勤は、働き方の多様化の一環として注目されています。一方で、「自転車通勤でも交通費は支給されるのか?」「その交通費は非課税になるのか?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。 この記事では、自転車通勤における交通費の非課税制度や、従業員・企業双方のメリット、導入時に企業が注意すべきポイントについて詳しく解説します。 目次自転車通勤の交通費は非課税になるのか自転車通勤制度を導入するメリット自転車通勤制度の導入にあたって会社が検討すべき3つのケースまとめ 自転車通勤の交通費は非課税になるのか 自転車通勤に対して交通費を支給する場合、一定の条件を満たせばその費用は非課税となります。 これは国税庁が定める「通勤手当の非課税限度額」に基づいており、その通勤方法や経路が最も経済的かつ合理的な経路および方法に該当する場合に適用されます。 非課税となる1ヶ月あたりの支給限度額は、通勤に要する片道の距離(直線距離ではなく、実際の通勤経路に沿った距離)に応じて、次のように定められています。 自転車通勤距離と非課税限度額 出典:国税庁「通勤手当の非課税限度額の改正について」 例えば、山手線の平均駅間距離が1.15kmですので、山手線近辺で自転車通勤を考えている方の場合、非課税額が適用される2kmを超えるには約2駅分の距離を自転車で通勤する必要があります。 ここで、実際に自転車通勤を検討する際には、片道20〜30km以上の距離となると現実的な選択肢とは言い難いでしょう。 つまり、自転車通勤制度を導入する場合、非課税の通勤手当として多くても約1万円程度の支給が一般的と言えますが、それ以外にどのようなメリットがあるのでしょうか。 自転車通勤制度を導入するメリット 自転車通勤制度を導入することは、従業員の健康面・経済面の利点に加え、企業イメージの向上やコスト削減などが期待できます。 ここでは、従業員側・会社側それぞれの視点から、自転車通勤制度を導入することのメリットを詳しく見ていきましょう。 従業員側のメリット 中・近距離の効果的な移動 自転車は渋滞の影響を受けず、鉄道の待ち時間や駐車場探しの手間も不要なため、一定の距離内であれば最も所要時間が短く、時間通りの移動が可能です。 そのため、中・近距離の通勤においては、他の交通手段と比べて効率的で安定した移動手段と言えるでしょう。 出典:自転車活用推進官民連携協議会「自転車通勤導入に関する手引き」 上の図は交通手段別の移動距離と所要時間の関係を表した図です。実際に約500mから5km程度の距離において、所要時間が最も短いことが確認できます。 身体面の健康増進 自転車による運動は、脂肪燃焼や体力向上の効果が期待でき、脚部や体幹部の筋肉を使うことにより筋力の維持・増強に役立ちます。 その結果、運動不足が一因となる各種疾患の予防が期待できるでしょう。 精神面の健康増進 自転車通勤は、徒歩や車では得られない心地よさがあり、加えて適度な運動などによって、気分の改善やメンタルヘルスの向上につながります。 さらに、都市部においては、満員電車に乗ることなく快適に自転車で通勤することができることもメリットの一つです。 会社側のメリット 経費の削減 自転車は車や公共交通に比べて通勤にかかる費用が少ないため、通勤手当の削減につながります。 また、車から自転車通勤への転換が図られることで、社用車や駐車場の維持にかかる固定経費などの削減につながります。 生産性の向上 次の図は、3カ月間の自転車通勤によって、働く人の「労働生産性」がどのように変化するのかを調査した結果です。 この調査では、ある企業において自家用車で通勤を行っている20名に対し、自転車通勤を3カ月間実施してもらいました。そして、WLQ-J(※1)という測定ツールを使い、「身体活動」「時間管理」「集中力・対人関係」「仕事の成果」という4つの尺度で表される労働生産性の変化を自記式のアンケートによって評価したものです。 出典:JOYRIDE「通勤サイクリングで仕事の生産性が高まる!?」 自転車に乗って通勤している従業員は、自家用車で通勤している従業員に比べ、心身ともに健康的であり、従業員の健康維持・増進に伴う生産性の向上が期待されます。 (※1)WLQ-Jとは『企業の「健康経営」ガイドブック(経済産業省)』および 『健康経営度調査票』において、推奨されている「プレゼンティーズム=健康の問題を抱えつつも仕事(業務)を行っている状態」を測定するツールです。 企業が自転車通勤を推進することは、環境配慮や従業員の健康促進といった観点から、企業イメージの向上や社会的評価の獲得が期待できます。 加えて、企業の近隣に住む住民の雇用確保の創出にもつながり、地域社会への貢献という面でも意義ある取り組みとなるでしょう。 自転車通勤制度の導入にあたって会社が検討すべき3つのケース ここまで自転車通勤制度を導入するメリットを挙げてきましたが、 自転車通勤は自由度が高く健康にも良い一方で、日々の通勤の中で思わぬトラブルに見舞われるケースも少なくありません。 この章では、従業員目線で特に気になると思われる天候不順や自転車事故、会社の保管環境といった観点について、会社が考慮すべきポイントをご紹介します。従業員が安心・安全に自転車通勤を続けるためのヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。 ケース1. 天候に応じて通勤手段を変えたい 「晴れの日は自転車で通勤したいが、雨の日は公共交通機関を利用したい」といった、天候に応じた柔軟な選択を希望するケースがあります。 しかし、会社に申請した経路と異なるルートで通勤しながら、申請通りの交通費を受給した場合、不正受給とみなされる可能性があります。 対応策 通勤手当の不正受給を防ぐには、社内ルールの整備が欠かせません。 従業員による不正受給が確認された場合、企業は差額の返還を求めるだけでなく懲戒処分を検討することもあります。 とはいえ、処分が重すぎると不当解雇と判断され、訴訟に発展するリスクもあるため、企業には事前の対策と慎重な対応が求められます。 ケース2. 通勤時に事故が発生した 自転車通勤中に事故を起こす、または巻き込まれる可能性はゼロではありません。事故発生時には冷静な対応が求められます。 対応策 事故の加害者・被害者に関わらず事故が発生した際には、道路交通法に基づき人命を最優先に救護措置や警察への通報を行うことが必要です。 従業員のパニックによる対応漏れを防ぐため、事故時の対応手順を事前に企業と従業員で共有しておきましょう。また、事故後は速やかに会社へ報告するルールを明確化することも重要です。 加えて、その通勤経路が「合理的な経路および方法」に該当すれば、企業への申請内容に関わらず通勤災害として労災保険が適用されます。 他にも、近年では各自治体の条例により、自転車を利用する個人に対して自転車損害賠償責任保険などへの加入が義務化されるケースが増えています。 こうした流れの中で、自転車を業務に使用する企業にも、保険加入の義務や責任が広がりつつあります。 ケース3. 会社敷地内で自転車が盗難に遭った 盗難や放置自転車を防ぐためには、企業による適切な管理体制の整備が求められます。 万が一盗難が発生した場合、責任の所在はどこにあるのでしょうか。 対応策 会社の敷地内や駐輪場で盗難が発生しても、通常は会社に賠償責任は発生しません。 多くの企業や駐輪場では「盗難・損害については責任を負いません」と明記しており、会社は駐輪スペースを提供しているだけで、保管契約を結んでいないためです。 ただし、会社が「自転車を預かる」と明確に約束していた場合や、防犯設備の設置を約束していたにもかかわらず怠った場合は、重大な過失として責任を問われる可能性があります。 つまり、こうした細部にわたる取り決め事項を事前に明確化し、ルールとして整備しておくことが重要です。 まとめ 自転車通勤制度の導入にあたっては、制度設計だけでなく、交通費の申請・精算といった実務面での効率化も重要なポイントとなります。 従業員が安心して制度を活用できるよう、企業の管理体制や業務プロセスの整備が求められます。 こうした業務の効率化を支援する手段として、業務支援システムの導入を検討するのも一つの方法です。 なお、電通総研では人材育成の幅広い課題に応える多様なサービスを展開しています。 例えば、大手企業向け統合HCMソリューション「POSITIVE」は、人事・給与管理を中心に企業の業務を統合的に支援するシステムです。 交通費精算の効率化にも役立ち、出退勤や出張の交通費を簡単に申請・精算できる機能を搭載しています。経路検索や領収書の台紙出力などの補助機能も備え、申請はワークフローに沿って承認され、承認者は一括承認や修正・却下が可能です。 自転車通勤制度の導入とあわせて、こうしたシステムの活用を検討されてみてはいかがでしょうか。 執筆者略歴 石井 株式会社電通総研 HCM本部 HCMコンサルティング1部 新卒で入社以来、大手企業向け統合HCMソリューション「POSITIVE」のカスタマーサクセス業務に従事。「お客様との対話を繰り返し、お客様と製品との懸け橋になる」という思いで日々業務に取り組んでいる。 ※このサイトに記載されている社名・商品名・サービス名等は、それぞれの各社の商標または登録商標です。 ※このコラムは執筆者の個人的見解であり、電通総研の公式見解を示すものではありません。