給与デジタル払いとは?メリット・デメリットと事例、導入に向けたステップをわかりやすく解説

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近年、日本国内においてキャッシュレス決済の普及が進行しています。2024年には、政府が掲げていたキャッシュレス決済比率40%の目標が達成されました。政府は今後、さらにこの比率を80%まで引き上げる方針を示しています。

こうした流れの中で、従来の銀行振込や現金支給に代わる新たな給与支払い手段として「給与デジタル払い」が注目を集めています。

本コラムでは、給与デジタル払いの仕組みやメリット・デメリット、導入事例、そして導入までのステップについて、わかりやすく解説します。

給与デジタル払いとは

給与デジタル払いとは、給与の一部または全額を、PayPayなど厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座に支払う方法です。これにより、従業員はチャージの手間なく、キャッシュレス決済サービス上のアカウントに直接給与を受け取ることができます。

従来、労働基準法では賃金は現金で支払うことが原則とされていましたが、労働者の同意があれば銀行口座への振込も認められてきました。20234月の労働基準法施行規則の改正により、労働者の同意があれば資金移動業者の口座への支払いも可能となりました。

20248月には、PayPayが初の指定資金移動業者として認定され、サービスの提供が開始されました。20254月現在、以下の4社が厚生労働大臣の指定を受けています(最新情報は厚生労働省の公式サイトをご確認ください

  • PayPay株式会社
  • 株式会社リクルートMUFGビジネス
  • 楽天Edy株式会社
  • auペイメント株式会社

給与デジタル払いのメリット・デメリット

メリット

利便性の向上

従業員は給与を即座にキャッシュレス決済サービスで受け取れるため、ATMでの現金引き出しや銀行窓口での手続きが不要になります。

コスト削減

銀行振込に比べて手数料が低い、またはかからない場合があり、企業のコスト削減につながります。

デメリット

事務負担の増加

支払い方法が増えることで、給与計算や管理業務が複雑になる可能性があります。

上限額の制限

デジタル口座には受け取れる金額の上限が設定されており、これを超える金額の受け取りはできません。

破綻リスクへの不安

資金移動業者が破綻した場合、保証機関による弁済制度はありますが、不安を感じる従業員もいるかもしれません。

導入事例:三井住友海上の取り組み

20252月、三井住友海上は、電通総研が提供する統合HCMソリューション「POSITIVE」を活用し、「PayPay給与受取」への対応を発表しました。この取り組みは、従業員の利便性向上を目的とし、給与受取の新たな選択肢を提供するものです。

ニュースリリースの詳細はこちらを参照ください。

導入に向けたステップ

給与デジタル払いを導入するには、以下のステップを踏む必要があります。なお、企業と資金移動業者との直接契約は不要です。

STEP1 労使協定の締結

企業は、給与デジタル払いを実施するために労使協定を締結する必要があります。

STEP2 従業員への説明

企業は、希望する従業員に対して、制度の内容や注意点を丁寧に説明します。説明の際には、賃金の支払い方法に関する他の選択肢(預貯金口座への振り込みまたは

証券総合口座への払い込み)もあわせて提示してください。具体的な説明内容は厚生労働省のサイトに参考例が掲載されています。

STEP3 制度への同意と関連情報取得

企業は、従業員から制度への同意を得る必要があります。従業員から同意を得る際に、合わせて、振込先情報などの情報も取得してください。従業員は、利用するキャッシュレス決済サービスのアプリ上で設定を行う必要があります。

STEP4 振込口座の登録

企業は、給与システムに従業員の振込先情報を登録します。

STEP5 振込処理

PayPay給与受取」は全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)に対応しており、企業の給与振込システムと連携しやすく、通常の振込と同様に処理が可能です。

「POSITIVE」による効率的な運用

電通総研の統合HCMソリューション「POSITIVE」は、20252月より「PayPay給与受取」に対応しました。必要情報の取得から給与計算・振込までを一元管理でき、導入のハードルを大きく下げることができます。

まとめ

本コラムでは、給与デジタル払いの概要、メリット・デメリット、導入事例、導入ステップについて解説しました。

キャッシュレス決済を日常的に利用する従業員にとって、給与デジタル払いは非常に利便性の高い制度です。企業側も、「POSITIVE」のような給与デジタル払い対応のシステムを活用することで、スムーズに導入が可能です。

今後、キャッシュレス社会の進展とともに、給与デジタル払いはますます注目を集めることでしょう。