未来を築く新人育成~POSITIVE ACADEMYの取り組み~ 注目の記事 公開日:2025年04月17日(木) 最終更新日:2025年04月21日(月) 近年、企業にとって、組織の成長を支える「人材育成」がますます重要な課題となっています。特に、新入社員に対しては、初期段階での教育が彼らの将来の成長に大きな影響を与えます。各部署やチームで異なる専門知識が必要な中、一貫性を持った教育体制を整えることは、組織全体の成長を促進するために欠かせません。 3,000社以上もの導入実績を誇る統合HCMソリューション「POSITIVE」の提供をはじめとし、人事領域における課題解決を支援する電通総研は、まず自社の組織成長や人材力強化を目指し、自律的人材育成に積極的に取り組んでいます。 こうした取り組みの一環として、「POSITIVE」を担当する弊社HCM事業部では、人事部による全社共通の新人研修に加え、独自の教育カリキュラム「POSITIVE ACADEMY」を導入しております。 本コラムでは、現在POSITIVE ACADEMYの運営担当である製品企画開発部2年目の中島・永吉から、 POSITIVE ACADEMYの創設背景や運営体制、実際の施策内容、そして関係者からの声を交えながら、その全貌をご紹介します。さらに、現状の課題に触れ、今後の展望についても考察していきます。新たな人材育成の取り組みとして、POSITIVE ACADEMYがどのように社員一人ひとりの成長を支援しているのか、ぜひご覧ください。 目次POSITIVE ACADEMYとは施策紹介関係者の声今後の展望まとめ POSITIVE ACADEMYとは POSITIVE ACADEMY(略称:ポジアカ)とは、「POSITIVE」を担当する、弊社HCM事業部の新入社員向け教育カリキュラムの愛称です。POSITIVE ACADEMYは、配属部署による教育内容のばらつきを防ぎ、全員が平等に成長機会を得られること、そして社員のスキルを体系的に管理することを目的としています。 POSITIVE ACADEMYでは、各部署に共通して必要となる基礎知識の習得や、人脈形成の機会を提供するほか、POSITIVEの模擬提案を行う実践的なカリキュラムを導入しています。これにより、一貫性のある教育を提供し、社員の能力開発を促進しています。 POSITIVE ACADEMYの歴史とその創設背景 POSITIVE ACADEMYは2019年度に創設され、2024年度までに計49名の新入社員がこのカリキュラムを受講しています。創設以来、試行錯誤を重ね、カリキュラムの一貫性を保ちつつ、改善が必要な部分には柔軟に対応し、カリキュラムを成長させてきました。 POSITIVE ACADEMYを創設した小菅優太さん(HCM事業部 製品企画開発室 業務開発グループ所属)は、その創設背景について次のように述べています。 「自分が新人の頃は、先輩が忙しそうで十分なOJTを受けている実感が得られず、”その日暮らし”のような感覚を抱いていました。また、1カ月先、2か月先に何をしているのか想像もできず、漠然とした不安を感じていました。その想いをベースに、後輩に対しては、より良い新人教育を行いたいと考え、POSITIVE ACADEMYを創設しました。また、長い目で見て、新人教育を充実させることが、組織力向上に繋がると感じたことも創設の動機となりました。」 POSITIVE ACADEMYの運営体制 事業部内の各部署が連携して、各施策の実行や新入社員のスキル管理に取り組み、POSITIVE ACADEMYの運営を支えています。 施策紹介 POSITIVE ACADEMYの施策は、POSITIVE Basic、POSITIVE Bridge、POSITIVE Clarisの大きく3つに分類されます。今回はそれぞれの施策についてご紹介します。 POSITIVE Basicについて POSITIVE Basicでは、半年間で各部署共通で身に着けるべき知識の習得と他部署との人脈形成を狙いとした施策です。若手メンバーによる「製品若手育成チーム」が施策の運営を担っています。 施策の具体的な内容としては、年次の近い先輩社員との定期的な「1on1」や、自身で立てた目標に対して方法をブラッシュアップして取り組んでいく「OKR(Objectives and Key Results)活動」、先輩社員や同期から客観的な視点でFBを貰い自己成長につなげる「他者FB」など、その他にも多くの施策で新人の能力開発を促進しています。 POSITIVE Basicの中でも特徴的な施策は「OJT勉強会」と呼ばれる施策で、様々な部署の先輩社員の方に講師としてご登壇いただき、テーマに沿って講義していただくものです。テーマは約40テーマあり、各部署で担当している仕事内容の紹介や、POSITIVEの機能特徴や基本的な法制度/保険の知識についてなど、多種多様な内容の講義が実施されています。 また講義の中では、担当者からの自己紹介やテーマに沿った内容はもちろんのこと、モチベーショングラフを使って今までの仕事内容を振り返りや、講師の方の仕事の流儀も語っていただきます。そのため、テーマについてだけでなく、講義者がどんな経験・考えを持った方なのかも知ることができます。 <OJT勉強会の雰囲気> このような取り組みから、POSITIVEを担う人材として必要な知識の習得や先輩社員の方との関係を構築することができ、キャリアの基礎を作り上げることができます。 POSITIVE Bridgeについて POSITIVE Bridgeでは、約3か月の期間で顧客業務とPOSITIVEの機能理解、模擬提案の経験を狙いとした施策です。普段お客様にシステム導入を行っているコンサルティング部隊のメンバーで構成される「コンサルマトリクスチーム」が運営を担っています。 具体的な内容としては、標準業務フロー・シナリオを用いたPOSITIVEの機能理解、標準業務フローやシナリオに基づいたデモの実施を行います。また最終成果として、想定顧客に対する模擬提案を行い、提案に必要な資料作成やプレゼンスキルの習得を目指します。 このような取り組みから、業務フローを使用した顧客業務とPOSITIVEの機能理解を通じて、POSITIVEに携わる上で全部署に共通する普遍的な知識を習得します。 POSITIVE Clarisについて POSITIVE Clarisでは、約3か月の期間で自身の配属先の特性に応じた教育を実施し、実務に近い経験を積むことができます。 具体的な内容としては、コンサルティングユニットに配属予定の新人は、技術者向けPOSITIVE導入教育プログラムであるPOSE(Positive Official Skills Education)で模擬導入を経験し、ビジネスデベロップメントユニットに配属予定の新人は、設計・実装作業を経験していきます。 このような取り組みから、この期間で自身のキャリアで必要な知識や経験を身につけることができます。 関係者の声 ここまで、POSITIVE ACADEMYの創設背景や施策内容に触れてきましたが、実際に受講した方や、配属先の上司の方はPOSITIVE ACADEMYについてどのような印象を持っているのでしょうか。また、POSITIVE ACADEMY創設者の方は教育に対してどのような想いを持っているのでしょうか。 受講者の方、配属先上司の方、創設者の方にインタビューを実施しましたので、ご紹介します。 受講者の声 今回は、過去にPOSITIVE ACADEMYを受講された尾形さん(HCM事業部 製品企画開発室 業務開発グループ所属)と前川さん(HCM事業部 コンサルティングユニット HCMコンサルティング3部 2グループ所属)にお話を伺いました。 新人にとってポジアカで学ぶことのメリットを教えてください。 毎年、その当時に業務にあたっているメンバーから直接話を聞けること。専任の講師ではなく、実業務担当のメンバーが講師を務めていることで、実際の業務に活きる知識を聞くことができます。事業部一丸となってHCMソリューションを提供している事業部ですので、ポジアカ修了後に共に協力する足掛かりとして、ポジアカを通じて各部の方と交流できるという点もメリットだと思います。(尾形さん) 「同期と切磋琢磨しながら体系的にPOSITIVE関連知識を学ぶことができる点」が最大のメリットだと思います。POSITIVEを取り扱うにあたり様々な知識が必要になりますが、POSITIVEのシステム仕様や人事業務等を体系立てて学べるカリキュラムが用意されています。このカリキュラムに沿って同期とともに学んでいくことで、各自が思い描くキャリアの礎を築くことができると思います。(前川さん) ご自身がポジアカで身についたと感じるスキルや知識を教えてください。 POSITIVEに携わる開発者の思想・開発指針に触れられたことと、各部署の雰囲気。コード規約や設計ルールといった細かい決まり事ではなく、人事・給与・就業を統合したパッケージを実現するために、各機能の開発では何が求められているのか、目指すべきソリューションの姿が何か、といった、言語化されにくいコアの部分に触れることができました。また、様々な方が登場するので、どの部署にはどんな方がいるのか、なんとなくですがイメージができました。(尾形さん) 様々なスキル、知識を身に着けることができましたが、中でも人事業務の流れとPOSITIVEの運用方法に関する知識は現在の業務でも非常に役立っています。(「POSITIVE BRIDGE」という施策を通じて身に着きました。)我々のお客様となる企業の人事部の方が、どのような年間スケジュールでPOSITIVEをどのように操作するのかを学ぶことができ、この知識があることによって、お客様とのミーティングの中で発言の意図等を汲み取ることができていると思います。(前川さん) 当時のポジアカでのカリキュラムや携わった業務のうち、印象に残った施策や業務を教えてください。 OKR(Objectives and Key Results)活動。自身で目標を設定して定量評価するというフレームワーク自体も、事業部で活動していく中で役立つ取り組みですが、配属当初で分からないことだらけの時期に、主体的に疑問点を解消することができる場としてとても重宝しました。その他にも、資格取得に向けた勉強など、受け身ではなく主体的に考える良い機会でした。(尾形さん) 開発担当者としてアサインされた法改正業務が印象に残っています。法律の改正に伴って発生したPOSITIVEの一部機能の開発を行ったのですが、そこでは設計・実装・テストを経験しました。開発に苦手意識があり苦戦しましたが、先輩方やチームメンバの方、同期のフォローもあり無事にリリースを迎えることができました。開発業務を通して困難に直面した際の対処方法を学ぶことができ、現在の業務でもこの経験が活きています。(前川さん) 配属先上司の声 配属先の先輩社員からみたPOSITIVE ACADEMYについて、岩谷さん(HCM事業部 コンサルティングユニット HCMコンサルティング4部 2グループ所属)にインタビューを行いました。 新人にとって、ポジアカでの経験が実際の業務に活かされていると感じることを教えてください。 製品の基本的な知識や製品の機能調査に関する勘所などはポジアカでの経験が活かされていると感じます。また、コンサルユニットにおいては、POSEの受講やPOSITIVE Bridgeにより、実案件にアサインされた際の作業や顧客業務に関する知識のベースがあることで新人の皆さん自身も業務のイメージが付きやすかったという声を聞いています。配属時に一から教育せずともスムーズに業務に入れるのはポジアカのおかげです。 今後のポジアカに期待していることを教えてください。 コンサルユニットでは、大規模案件の増加に伴う要員確保のため、若手社員の早期戦力化に向けた受入れ・育成の強化に注力しておりますが、その活動においてもポジアカでの教育は大変重要なものだと認識しています。各ユニット配属前の共通教育という位置付けでポジアカが実施されておりますが、今後もユニットの壁を超えてHCM事業部全体の人材育成の教育カリキュラムとして、より即戦力のある社員を生みだしていってほしいです。 創設者の声 POSITIVE ACADEMYの創設者である小菅さん(HCM事業部 ビジネスデベロップメントユニット 製品企画開発部 業務開発グループ所属)に新人育成についてインタビューを行いました。 ポジアカ創設者が考える”新人育成”について教えてください。 “新人育成”とは、新人「が」学ぶことはもちろん、新人「に」学ぶ側面もあると考えています。私自身、今まで接してきた後輩から、自分にない物事の考え方や振る舞いを学んできました。育成をとおしたコミュニケーションは、若い世代のフレッシュな考えと、上司先輩の経験に裏打ちされた知識をミックスさせる良い機会であり、組織全体の底上げに繋がるはずであると信じています。 今後の展望 近年、新入社員の増加に伴い、POSITIVE ACADEMYの教育カリキュラムが全員に共通する”最大公約数的”な内容になる傾向が見られます。このような一律の教育内容では、社員一人ひとりの成長や能力開発を最適化することが難しいという課題が生じます。 今後は、教育カリキュラムの期間や内容を画一的に定めるのではなく、社員一人ひとりに合わせた柔軟なプログラムの導入を目指します。例えば「卒業要件」を設けることで、プログラムの期間や内容を個々に調整できる仕組みを検討しています。これにより、社員一人ひとりの意欲や能力を最大限に引き出し、教育の効果を最大化できると考えています。 まとめ 本コラムでは、弊社HCM事業部の新入社員向け教育カリキュラム「POSITIVE ACADEMY」についてご紹介しました。HCM事業部では、「ヒトを信じ、日本の「はたらく」を変える」というパーパスを掲げ、その実現に向けて、次の4つの要素を大切にしています。 「ヒトが持つ可能性を信じる」 「まだ見ぬ「はたらく」を創る」 「ヒトの成長を組織の成長へつなぐ」 「ヒトの力が生きる共創を拡げる」 特に、「ヒトが持つ可能性を信じる」ことは、POSITIVE ACADEMYにおいても重要な要素です。今回ご紹介したPOSITIVE Basic施策では、年次の近い先輩社員との定期的な「1on1」、先輩社員や同期から客観的な視点でFBを貰い自己成長につなげる「他者FB」、先輩社員による「OJT勉強会」などの多様な取り組みを通じて、社員一人ひとりが自身の可能性を広げ、新たな視点やチャンスを見出すきっかけとなっています。 また、「ヒトの成長を組織の成長へつなぐ」ことは、POSITIVE ACADEMY創設の根底にある想いでもあります。 このような取り組みや想いを通じて、新人の成長が組織全体の成長につながり、POSITIVE ACADEMYがHCM事業部のパーパス実現に少しでも寄与できるよう、今後もPOSITIVE ACADEMYのさらなる発展に取り組みます。