【第2回】組織でニューロダイバーシティを育てる第一歩は?

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電通総研が主催する「電通総研HRフォーラム2025」では、『ニューロダイバーシティが拓く未来 — 才能を活かす組織マネジメント』をテーマにHRトレンド講演を行いました。
本連載では、その内容を全4回にわたりお届けしています。

連載の第2回となる今回は、株式会社電通そらり 前代表取締役社長 清水 恒美 氏、株式会社Kaien 大野 順平 氏をゲストに迎え、電通総研 関島 勝巳、新井 ゆかりを加えた4名で行ったパネルディスカッションの1つ目のテーマ「ニューロダイバーシティの推進は何から始めるべきか」についてレポートします。
このレポートが、皆様へのヒントになれば幸いです。

<その他の連載回はこちら>
第1回 ニューロダイバーシティとはーサマリと概要説明
第2回 組織でニューロダイバーシティを育てる第一歩は?
第3回 相互尊重が生み出す変化 ~現場で起こるポジティブな効果
第4回 ニューロダイバーシティの理念を組織文化へ

※HRフォーラム2025講演当時(2025年6月時点)の情報を掲載しています。

パネリストの紹介 

・関島 勝巳(モデレーター/パネリスト)
  電通総研の特例子会社 電通総研ブライト初代社長。
  電通総研グループの障がい者雇用を20年けん引してきた。

・清水 恒美 氏(パネリスト)
  電通の特例子会社 電通そらりの代表取締役社長を7年務めた。
  業務領域の拡大や人事・評価制度の改革など、様々な視点で障がい者雇用をリードしてきた。

・大野 順平 氏(パネリスト)
  株式会社Kaienにて、発達特性のある人への自立訓練と就労移行サービスを提供。
  企業へのコンサルティング、人材紹介などの支援で、人材定着に貢献している。

・新井 ゆかり(パネリスト)
  企業の業務改革を支援するコンサルタント。企業の働きやすさ、
  働きがいの実現に貢献するとともに、ニューロダイバーシティの推進活動にも注力している。

今回のパネリスト4名中3名が障がい者雇用に関わりがありますが、パネリスト4名全員が「ニューロダイバーシティは障がい者雇用に限った視点ではなく、すべての人が働きやすくなるための考えである」という前提に立っています。

 

参加者のニューロダイバーシティ尊重への取り組み状況(ライブ投票) 

当日は約100名の方にご参加いただき、パネルディスカッション冒頭で、参加者に「自社での現在のニューロダイバーシティ尊重への取り組み状況」を伺いました。

(当日の投票結果から作成。単位は(名))

「発達特性(※1)などのある従業員に対して、一定の支援や配慮を行っている」と回答された方が回答者の46%と最も多く、「ニューロダイバーシティを意識した取り組みを積極的に進めている」と回答された方は4%でした。
「障がい者雇用は推進していても、ニューロダイバーシティを尊重しているとは言い切れない」と悩む方が多い状況がうかがえます。発達特性のある人を採用していること、イコール、ニューロダイバーシティが進んでいると言えるでしょうか。

※1 発達特性
発達特性とは、脳の認知や感覚などでの個人差を指すもので、多様な思考やスキルの一部を構成し、その特性の違いで、コミュニケーション、情報処理、学習に各人の特徴的なパターンが現れます。私たちはこのパターンを個々人の特性と捉えることから、本コラムでも「発達障がい/神経発達症(または類する傾向)」とはせず、「発達特性」と表現しています。

何から始めるべきか? 

ニューロダイバーシティを推進すると言っても、その始め方には様々な選択肢があります。パネルディスカッションの最初のテーマとして、多くの企業が直面しているであろう「何から始めるべきか」を議論しました。
ニューロダイバーシティは障がい者雇用に限定されるものではなく、診断の有無に限らず、一人ひとりの違いに配慮するという考え方である。まずはそのことへの「理解」を得ることからである、と大野さん、清水さんは語りました。

大野氏:
ニューロダイバーシティは「発達特性のある障がい者雇用の話?」と思われることが多くあります。しかし、そこに限定されるものではないと理解してもらうことから始めるべきだと考えます。

1976年に身体障害者雇用促進法で雇用義務が始まり、障害者手帳を持つ人の一人ひとりにあった支援が義務化されました。その40年後の2016年に施行された障害者差別解消法で、手帳の有無によらず申し出がある場合には合理的配慮が必要になりました。義務化されて10年経ちますが、把握していない人事担当者さんも多い状況です。

そして今、診断などの有無に関わらず、一人ひとりの違いを配慮、理解しようというニューロダイバーシティの考え方が主流になり始めています。
つまり、ニューロダイバーシティはこうして裾野が広がってきた考え方で、障がい者雇用を否定するものでもなく、新しいものでもなく、拡張した先にあるものです。

ニューロダイバーシティを、診断を受けて手帳を持つ人への福祉のテーマと限定して捉えることなく、“全員が関係するイシュー”であると理解してもらうことが最初のアクションです。ただ、これが難しいなと思っているところです。

清水氏:
おっしゃる通りですね。
一人ずつの考え方へのアプローチと、会社の場合は経営層の理解をどう深めていただくかも、まず進めていくべきポイントです。

「福祉的な観点から、“何かを同じようにはできない人”への配慮として取り組むものでしょう」と思う組織の上層部もまだ多くいるようです。
日本でも、多様性の理解が深まり、「何が”普通”なのか」「”普通”とはどうなのか」の捉え方が少しずつ変わっています。配慮のあり方や、多様性に対する相互理解の対象者の範囲も広がってきています。ですが、まだ浸透が足りていません。

一人ひとりが理解し、それを言葉で発信していくことこそ、まず一番にできたら、と思います。

本テーマのまとめ 

パネルディスカッションの1つ目のテーマとして、「何から始めるべきか」を議論しました。

まず、“一人ひとりが“ニューロダイバーシティへの理解を深めることの重要性を認識することが欠かせません。ニューロダイバーシティは一部の人に対する施策だけを意味するものではなく、皆が働きやすくなるための「全員にとっての自分事」です。人事施策に携わる方々にとっても、もし「自分自身には発達特性がないのでよく分からない」「特定の誰かに対しやってあげること」といった思い込みがあるのなら、それを解消し、自身のニューロダイバーシティの考え方への理解を社内に広げていこうとすることが始まりだと考えます。

また、ニューロダイバーシティの浸透には「これにさえ取り組めばすべて解決」といった確立されたメソドロジーはありません。自社内での理解を進めるためにどうしたらよいのかを、対話を通して考え、トライし続けることが鍵となります。

次回は「ニューロダイバーシティを推進した結果、何が起きるのか?」をテーマにしたディスカッションパートをレポートします。


執筆者

新井ゆかり
株式会社電通総研
コンサルティング本部

 

 

福田陽奈子
株式会社電通総研
コンサルティング本部

 

 

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このコラムは執筆者の個人的見解であり、電通総研の公式見解を示すものではありません。