年末調整の電子化|2027年の制度改正を見据えて進めるべき理由と導入のポイント 人事キーワード・ノウハウ 公開日:2026年11月04日(水) 年末調整の時期になると、「申告書の回収が進まない」「記載漏れや添付書類の確認に追われる」といった悩みを抱える人事・労務担当者も多いのではないでしょうか。申告書の配布・回収、内容確認、不備対応、データ入力など、多くの工程が発生しますが、こうした年末特有の業務負担を軽減する方法として注目されているのが「年末調整の電子化」です。 近年はマイナポータルとの連携やクラウド型年末調整システムの普及により、従業員・企業双方の負担を大幅に軽減できる環境が整ってきました。2027年(令和9年)からは、法定調書の電子提出義務の対象が拡大されることもあり、多くの企業で電子化への対応が求められています。 前回は以下のような記事がありましたが、今回は年末調整の電子化にフォーカスして解説いたします。 目次年末調整の電子化とは? 年末調整の電子化は義務なのか?年末調整を電子化するメリット年末調整を電子化するデメリット年末調整の電子化で押さえておきたい注意点年末調整の電子化を成功させるポイントまとめ 年末調整の電子化とは? 年末調整の電子化とは、これまで紙で作成・提出していた各種申告書や控除証明書を、電子データでやり取りする仕組みです。従業員はPCやスマートフォンから申告を行い、企業側はオンラインで回収・確認・保管まで実施できます。 対象となる主な書類は以下のとおりです。 ・扶養控除等申告書 ・基礎控除申告書 ・配偶者控除等申告書 ・特定親族特別控除申告書 ・所得金額調整控除申告書 ・保険料控除申告書 ・住宅借入金等特別控除申告書 など 参考:国税庁「No.7401 法定調書の種類」 年末調整の電子化は義務なのか? 現時点では年末調整の電子化そのものに法的義務はありません。しかし、法定調書の電子提出義務の拡大やバックオフィス業務のDX推進を背景に、電子化へ移行する企業は年々増えています。 2027年から対象企業が大幅に拡大 2026年11月4日時点の国税庁からの情報によると、2027年(令和9年)1月以後に提出する「給与所得の源泉徴収票」などの法定調書について、電子提出義務の判定基準が大きく変わります。従来は、「前々年に提出すべきであった法定調書の提出枚数が100枚以上の企業」が対象でしたが、「30枚以上」へと引き下げられる予定です。 これにより、多くの中堅・中小企業が新たに電子提出の対象となります。 これまでのように、紙で集めた情報を後から手入力する運用では、入力作業に時間がかかるうえ、転記ミスや記入漏れの確認・修正にも手間がかかります。電子提出の義務化に向けて申告情報を正確にデータ化する必要があるため、紙を前提とした運用を見直し、年末調整業務そのものを電子化する企業が増えています。 参考:国税庁「No.7455 法定調書の提出枚数が30枚以上の場合のe-Tax、光ディスク等又は認定クラウド等による提出義務」 年末調整を電子化するメリット 従業員のメリット ・年末調整申告書の手書き作業が不要になる ・控除額の自動計算により、計算ミスを防止できる ・控除証明書などをデータで管理できるため、書類の紛失リスクが減る ・マイナポータル連携を利用すれば、複数の控除証明書をまとめて取得できる ・いつでも電子データで確認・管理でき、利便性が向上する 年末調整の電子化は、単なるペーパーレス化ではありません。担当者の業務負担軽減だけでなく、従業員の利便性向上やデータ活用にもつながります。 企業(勤務先)のメリット ・従業員が作成した申告書データを取り込めるため、控除額の検算作業が不要になる ・控除証明書等のデータ連携により、添付書類の確認業務を削減できる ・記載漏れや入力ミスが減る ・従業員への差戻しが減少する ・紙書類の保管スペースや管理コストを削減できる ・ペーパーレス化を推進できる ・担当者の負担軽減と生産性向上が期待できる 参考:国税庁「年末調整手続の電子化の概要・メリット」 年末調整を電子化するデメリット 従業員のデメリット ・紙での申告に慣れている従業員は、電子申請の操作方法や提出手順に戸惑う可能性がある ・システムの操作に不慣れな場合、入力ミスや提出漏れが発生する可能性がある ・システムやツールの利用方法に関する研修やマニュアルの確認が必要になる 企業(勤務先)のデメリット ・年末調整システムや関連ツールの導入費用、利用料などのコストが発生する ・システム選定や初期設定、申告フローの変更など、運用準備に時間と労力がかかる ・導入初期は従業員からの問い合わせ対応が増加する可能性がある ・個人情報や給与情報を電子データとして扱うため、セキュリティ対策や適切な運用管理が求められる 年末調整の電子化で押さえておきたい注意点 初年度はサポート体制の整備が重要 デジタル手続きに慣れていない従業員がいる場合、操作方法に関する問い合わせが増える可能性があります。 導入時にはFAQの作成や説明会の開催、問い合わせ窓口の設置などを行い、安心して利用できる環境を整備しましょう。 セキュリティ対策を徹底する 年末調整では、氏名・住所・マイナンバー・家族情報などの機微な個人情報を扱います。 そのため、アクセス権限の管理、データ暗号化、多要素認証、ログ管理などのセキュリティ対策を確認しておきましょう。 電子帳簿保存法への対応も確認する 電子化した申告書類の中には、電子帳簿保存法の対象となるものがあります。 保存期間や検索要件などを満たした運用が必要なため、システム選定時には法令対応状況も確認しておきましょう。 年末調整の電子化を成功させるポイント システム選定は「使いやすさ」を重視する 年末調整システムにはさまざまな製品がありますが、機能だけでなく「従業員が迷わず使えるか」が重要です。 特に以下のような機能があると運用しやすくなります。 ・スマートフォン対応 ・マイナポータル連携 ・控除証明書のデータ取込機能 ・給与システムとの連携 ・未提出者への自動リマインド ・電子帳簿保存法対応 など 段階的な導入と万全の準備 現場の混乱を抑えながら、スムーズな導入と定着を図るためにも、いきなり全面電子化するのではなく、まずは申告書の回収だけ電子化するなど、段階的な運用も有効です。 年末調整の電子化はマイナンバーカードが必須ではありませんが、マイナポータル連携することで控除証明書の一括取得や基本情報の自動入力が可能となり、利便性が大きく向上します。導入を予定している企業は、年末調整時期の少なくとも2か月以上前には従業員へ取得を促すなど、事前準備を進めておくことが重要です。 従業員の協力なくして年末調整の電子化の実現は難しいため、早めの周知をすることで理解と協力を得ておきましょう。 まとめ 2027年から法定調書の電子提出義務の対象範囲が拡大されることにより、多くの企業がデジタル対応を求められることになります。現時点では年末調整自体の電子化は義務ではありませんが、業務効率化や人手不足対策、ペーパーレス推進の観点から、その必要性はますます高まっています。 電通総研の統合HCMソリューション「POSITIVE」は、年末調整に必要な申告書の作成・回収から進捗管理までをオンラインで行うことが可能です。従業員と担当者の双方にとってわかりやすい手続きに切り替え、繁忙期の業務負担を減らしたい企業の方におすすめです。 3,000社以上の導入実績を持ち、年末調整の申告機能だけでなく、基幹の人事・給与・就業管理、ワークフローまでをひとつのデータベースで一元管理します。データのインポート・エクスポートや転記の手間、それに伴うセキュリティリスクの低減につながります。 POSITIVE 年末調整 デジタルガイドサービス 無料ダウンロードはこちら 毎年発生する年末調整業務だからこそ、早めに電子化へ取り組むことで担当者の負担を減らし、より働きやすいバックオフィス体制を構築するために、年末調整の電子化を検討してみてはいかがでしょうか。 お問合せ・ご相談はこちら ※このサイトに記載されている社名・商品名・サービス名等は、それぞれの各社の商標または登録商標です。 ※このコラムは執筆者の個人的見解であり、電通総研の公式見解を示すものではありません。