【第4回】取締役会で「人材パイプライン」を議論せよ|人的資本経営を形骸化させない可視化の仕組みとは?

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はじめに——サクセッションプランは「作って終わり」ではない 

全4回にわたり、人的資本経営時代のサクセッションプランニングについて考えてきました。未来の事業戦略から逆算した要件定義、データドリブンな人材発掘、そして組織全体のエンゲージメントを高める運用。これらはすべて一本の線でつながっています。
最後に、最も大事なことをお伝えします。サクセッションプランは「作って終わり」の書類ではなく、経営環境の変化に合わせて「動かし続ける」ものだということです。そしてその主役は人事部門ではなく、経営陣自身です。

人的資本経営時代のHRデータ活用とは

自社の経営陣はファクトに基づいた「同じデータ」を見て議論できていますか

戦略人事がきちんと機能している企業の取締役会や経営会議では、財務諸表と同じように「人材のデータ」も当たり前に議論の対象に上がります。
「新規事業を牽引できるリーダー候補が、全社で何人プールされているか」「海外展開を担う人材のパイプラインは順調に育っているか」「候補者に適切なタフアサインメントを提供できているか」。こうした問いを、役員個人の印象や曖昧な報告ではなく、ファクトに基づいて議論します。経営陣が同じデータを見ながら、共通の土台で議論できる状態をつくること。それがスピーディーで精度の高い意思決定を支えます。

「人材パイプラインの現在地」が一目で分かるダッシュボードが経営を変える

この議論を支えるのが、タレントマネジメントシステムに蓄積されたデータを統合・可視化した「ダッシュボード」です。
経営陣はダッシュボードを通じて、自社の人材パイプラインの現在地を一目で確認できます。

たとえば、
・重要ポストに対する後継者候補の充実度(カバレッジ)
・候補者のスキル充足度
・エンゲージメントスコアの推移
などです。

これらを掛け合わせて可視化することで、「5年後の戦略に対して、この領域の人材プールが決定的に足りない。だから今、外部採用やM&Aによる人材獲得に投資すべきだ」といった判断が、経営戦略と地続きのかたちで下せるようになります。
なかでも、エンゲージメントスコアは近年、「将来の業績を予測する先行指標」として注目が高まっています。前回お話ししたとおり、サクセッションプランの透明性や戦略的な人材配置は、エンゲージメントに直結します。人材パイプラインの充足度とエンゲージメントの推移を並べて見ることで、「人は揃っているが、組織の熱量が下がり始めている」といった兆候を早期に捉え、手を打つことができます。

システムとデータの統合が「戦略人事」を実現する 

本連載の第1回で、「Excelで作られた手作業のリストは形骸化する」というお話をしました。
属人的な情報収集から抜け出し、全社のタレントデータを一元化し、それを経営陣のダッシュボードに直結させる。この「データのサプライチェーン」を途切れさせないことが、現代のサクセッションプランニングにおいて最も重要な基盤であり、システムを入れる本来の目的です。
システムは効率化のためだけの道具ではありません。経営会議の中身を変え、人的資本経営を前に進めるための「インフラ」です。

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おわりに——人事と経営が同じ方向を向くために

サクセッションプランニングを通じて、自社の人的資本を最大限に活かし、持続的な企業価値の向上につなげていく。その道のりは簡単ではありませんが、制度・運用(コンサルティング)とデータ基盤(システム)の両輪をきちんと回すことで、着実に前に進めることができます。
電通総研では、未来の経営要件の定義から、タレントマネジメントシステムの導入・定着化、さらに、経営ダッシュボードの構築を通じた人的資本データの可視化まで、一気通貫で企業の「戦略人事」への進化を支援しています。「開示のためのリスト」から脱却し、業績を牽引する人材パイプラインの構築へ。その一歩を、ぜひ私たちと一緒に踏み出しましょう。

執筆者略歴

斉藤 雅良

株式会社電通総研
HCM本部 HCM戦略コンサルティング部

株式会社電通総研入社以来、主に金融機関様向けの業務・人事・組織構造改革や、そのシステム 開発プロジェクトに多数従事。 近年は、業界問わず人事領域全般におけるコンサルティングプロジェクトに複数参画し、2023年5月より ローンチされたトータルHRソリューション「HUMAnalytics」と、人事基幹システム「POSITIVE」の周辺 サービスに関する企画・推進の統括責任者として、より多くの企業の人的資本経営実現をサポートしている。

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※このコラムは執筆者の個人的見解であり、電通総研の公式見解を示すものではありません。